TD-NMRによる最新研究(with高井准教授)

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粒子表面の“ちょっとした違い”を検出

シリカ粒子の表面を、“ちょっとだけ”違う官能基で修飾したとき、緩和時間に変化が出てくるかどうかを調べました。具体的には、シリカ表面に、疎水性を示し、長さの異なる炭化水素(鎖長3、6、12)を導入したときの、極性溶媒(エタノール)、低極性溶媒(ヘキサン)およびこれらの混合溶媒に対する親和性を調べました。疎水性を示すけれども、官能基が少しでも異なれば、緩和時間に違いが出てくること、そして、混合溶媒の比率が異なると、親和性が異なることが分かりました。樹脂のように異なる官能基を持つマトリックスに対して、適した表面を持つ粒子の設計指針を作る基盤として展開できると考えています。


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Atsushi Teramae, Chika Takai-Yamashi, Junko Ikeda, Seiji Yamashita, Motoya Sugiura, Ariga Kato, Yutaka Ohya, Paul Kinyanjui Kimani
A time-domain nuclear magnetic resonance (TD-NMR) as a tool to characterize affinity between partially hydrophobic silica nanoparticles and ethanol/hexane mixtures
Advanced Powder Technology, Volume 35, Issue 9(2024)

高粘度でも、繊維状でも、そのまま測定

水系に分散したセルロースナノファイバー(CNF)は、低濃度でも粘度が高く、その性質から様々な分野で応用が期待されています。CNFはグルコース由来の水酸基をたくさん持ち、ナノサイズの径を持ったアスペクト比の大きな繊維です。水中では、繊維間に水を含み、高粘度なゾルを形成していると考えられます。

20 wt%CNFゾルは、ほとんど流動性がありません。こちらの緩和時間を測定すると、非常に低い値となります。これを水で希釈していくと、緩和時間は増加していきますが、ある濃度を境に急激に緩和時間が長くなる現象が見られます。希釈することにより繊維間の距離が離れ、抱え込む水が少なくなったことにより、緩和時間が長くなったと考えられます。CNFは環境によって敏感にその構造を変えます。TD-NMRを使えば、短時間でCNFの品質管理ができると考えます。



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Chika Takai-Yamashita, Junko Ikeda, Yuya Wada, Yutaka Ohya, Yoshifumi Yamagata, Yuichi Takasaki, Masayoshi Fuji & Mamoru Senna
Change in the dispersion states of short-length-cellulose nanofibers upon dilution investigated by a time-domain nuclear magnetic resonance (TD-NMR), Cellulose 29, 7049-7062(2022)

昆虫の糞だって測定できちゃう

夏の風物詩、カブトムシ。成虫は角があれば雄、と容易に容姿から雌雄の区別がつきますが、幼虫の見た目はよく似ています。腐葉土中で孵化した幼虫は、腐葉土を食べ、ぐんぐん成長していきます。その間、腐葉土中に糞をします。2回脱皮して終齢幼虫となったカブトムシの糞はコーヒー豆程度の大きさです。幼虫の腸(後腸)の先から排出された糞は、見た目は雌雄差がないように見えますが、糞の形が決まる付近に生殖器があることを考えると、もしかしたら、糞の形に雌雄差があるかもしれない、こんな興味からカブトムシの幼虫の糞の形を調べる研究を始めました。

 機械学習(MT法)を使って、糞の形の特徴量間の相関関係を比べていって、データのパターンの類似性を見ていきます。パターンが類似していたら同じ性別、類似していないなら違う性別、という風に分類していきます。その結果、ある特徴量を使うと、糞の形だけで雌雄分類が可能となることが分かりました。

 ある特徴量、それは、糞の表面の凹凸でした。なぜ、糞を排出する際に、凹凸に雌雄の違いが出てくるんだろう・・?それを調べるために、TD-NMRを使いました。粉同士をくっつけて糞という一つの成形体を作るためには、糊となるバインダーの成分がきっと必要です。そのバインダーの量をSpin Trackを使って非破壊で調べてみると、雌の糞の方がバインダー量が少し多いことが分かりました。非破壊、短時間で測定が可能だからこそ、できた測定だと思います。



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Chika Takai-Yamashita, Seiji Yamashita, Yuya Mabuchi, Atsushi Teramae, Takuya Matsuyama, Yuki Taguchi, Taiga Mushika, Yuya Wada, Shinta Fitria Novasari, Junko Ikeda, Yutaka Ohya
Sex determination of Japanese rhinoceros beetles, Trypoxylus dichotomus (Coleoptera: Scarabaeidae), based on their dropping shape, Advanced Powder Technology,Volume 33, Issue 5,(2022)

繊維の表面活性が分かる?

セルロースナノファイバー(CNF)を、ナノ粒子と複合化して機能性材料にしたいと考えています。CNFと粒子の複合化を促進するためにはきっと、繊維表面に粒子が複合化しやすいサイトを作ることが必要だろうと考えます。その方法のひとつに、機械的な表面処理があります。

 機械的な処理を施したとき、繊維表面が活性化したかどうかを調べる方法はいくつかありますが、TD-NMRなら、水中に存在しているCNFの表面を、分散液のまま測ることができます。複合化に適した表面ができたかどうか、その場で評価することができるので、作業効率の向上に貢献することができると考えます。



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高井(山下)千加, 馬渕裕也, 池田純子, 藤正督, 仙名保, 大矢豊
遊星ボールミルがセルロースナノファイバーゾルに与える物理化学的影響と表面活性, 粉体工学会誌4月号, (2021)


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岐阜大学工学部 化学・生命工学科 物質化学コース 准教授 
東北大学多元物質科学研究所 准教授 
高井(山下)千加 先生
Email: takai.chika.h3*gifu-u.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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