[概要]
市販されている2種類のパンを用意しました。
柔らかさの違いを数値化して比較するため、TD-NMR Spectrometer Spin trackを用いて緩和時間T2(CPMG法)を測定しました。
<パンA>
ややかたく張りがある角食パン
表示原材料:小麦粉、砂糖混合異性化液糖、ショートニング、パン酵母、食塩、脱脂粉乳、乳化剤、酢酸Na、イーストフード、V.C.
<パンB>
ふわふわと柔らかい山型食パン
表示原材料:小麦粉、糖類、マーガリン、パン酵母、食塩、脱脂粉乳、小麦グルテン、発酵風味量、果汁粉末、植物油脂、甘味料、乳酸Na、酢酸Na、香料、カロチン色素
[実験]
1. パンをピンセットを用いて小さくちぎり、つぶさないよう慎重にガラス試料管に詰めました。
2. TD-NMRを用いて緩和時間T2(CPMG法)を測定しました。
[結果]
緩和時間は3成分にて得られ、パンA,Bとも運動性の異なる3成分からなることがわかりました。
各成分の存在割合は強度比から算出しました。
短成分の割合=(短成分強度)/(短成分強度+中成分強度+長成分強度)
中成分の割合=(中成分強度)/(短成分強度+中成分強度+長成分強度)
長成分の割合=(長成分強度)/(短成分強度+中成分強度+長成分強度)
平均緩和時間=1/(短成分の割合/100/短成分の緩和時間+中成分の割合/100/中成分の緩和時間+長成分の割合/100/長成分の緩和時間)
表 緩和時間と存在割合
[考察]
緩和時間の長成分の存在割合に着目すると、パンBはパンAより長成分が多く存在することがわかりました。
緩和時間の長成分:構造が粗になっており運動性が高い成分、短成分:構造が密になっており運動性が低い成分と考えられます。
この結果から、パンBがパンAに比べふわふわと柔らかい感触を示すことは、構造が粗で運動性が高い成分が多く含まれるためと予想されます。
パンの柔らかさの違いを、緩和時間と強度比から数値化して比較することができました。